【読書レビュー】かか 〜得体の知れない感情に胸を貫かれた〜
今回紹介する作品は「かか」という小説です。
ライトノベルではないですが、最近読んでみて面白かったので記事にしてみました。
もし良ければお付き合いください。
この作品、書店で表紙に惹かれて手にとってみたのですが、
なんと20歳でデビューした作家が書いているというではないですか、
私と歳が近いだけにどんな作品なのか気になってしまい購入しました。
読んでみた感想ですが一言、「これは化物」ですね。
面白い、面白くないという評価ができない。いや、そんな言葉では評価していけないように感じました。
まぁ、結果的にいえば面白かったのですが、、
なんといえばいいのでしょうか、人間の心情というものをそっくりそのまま文章に書き起こしたような…なんとも表現が難しい作品でした。
作者について
宇佐見 りん氏は大学在外学中に本作「かか」で文藝賞を受賞。
2020年には「推し、燃ゆ」が刊行されました。
あらすじ
主人公の「うーちゃん」は母親が心の病を患ってしまったことにより悩んでいる。
大好きだった母親が豹変していく…酒を飲むたびに暴れることを繰り返す。
ボロボロの母、自分勝手な父親、自分が女性として生まれたことへの苦悩。
あらゆる感情がごちゃごちゃになってどうしようもなくなったうーちゃんは
旅へでる。
といった感じです。
うーん、イマイチあらすじを伝え切れていない気もしますが。許してください。
作品について
「かか」は河出書房新社より刊行された単行本です。
ページ数は115ページと少ないですが、その中で登場するうーちゃんを中心とした家族や出来事は色濃く読んでいくにつれ胸焼けをするほどの生々しさがあり、たった115ページとは思えないほどの重量感があります。
ページ数が少ないから1、2時間で読めるだろうと楽観して読み始めると痛い目に遭います。
内容・魅力について
本作の最大の特徴といえるのは特殊な文体ですね。
通常の文章とは違い方言と口語が入り混じる文章になっています。
あえて方言などを使用して描かれた作品は他にもありますが、
普通は文章にリズム感をつけて読者に読ませやすくするのを目的としていることが多いでしょう。
しかし、この作品ではあえてそのリズムを崩してきています。
読者が読みやすいというリズムを崩すことによって「かか」の世界観や主人公のうーちゃんの心情をうまく表しています。
はっきりいって、始めの頃は読みにくくて仕方ありませんでした。
しかし、進めるうちにその読みずらさは不思議と消えていき、
うーちゃんの心情を自分がそのまま感じていることなのではないかと錯覚させられるような不思議な感情に陥りました。
作中には「おまい」(おまえ)がでてきます。
何を言いたいかというと本作は二人称で書かれています。
読者自身もうーちゃんの家族の一員としてその生々しい本作を感じることができるようになっています。この仕掛けがまた胸に突き刺さります。
もし本作を読まれるのでしたら「おまい」とは誰のことなのか、
うーちゃんはなぜ旅に出なければいけなかったのかということに焦点を当てて読んでいただきたいです。
なななの感想
上記でも少し書きましたが、方言や口語を活用した文章で読みにくく感じましたが、
読後はその読みにくさすら愛おしいと感じました。
それはもう、読み終わった時に知らぬうちに涙を流してしまったほどに…。
ページ数は少ないですが、そのページの中には濃密で凝縮された得体の知れないもにを感じました。
本のおびに「子供の頃に吐くほど泣いた、あの日の記憶が息を吹き返した。味や匂いのする文章だった」と書かれているのですが、まさにその通りで文字1つ1つに人間味を感じるモノでした。
読み終わってすぐにこの記事を書いているのですが、正直ちゃんとしたことが書けているのか自信がありません。
それほど、衝撃的で得体の知れない作品でどうしてもこの感情を文字にすることができません。
ぜひ、この感情を知っていただきたい。
読んでみて損はしない作品かと思います。
今回はここまでです。
読んでいただいた方はありがとうございます。
下記に宇佐見 りん氏のもう一つの作品である「推し、燃ゆ」の商品リンクを貼っておきますのでご活用ください。