【ラノベレビュー】君が、仲間を殺した数  ~待っていたこれがダークファンタジーだ~

※この記事は2020年11月に掲載した記事の再アップになります。

君が仲間を殺した数」感想と評価 | 赤の魔導書

今までは映像化された知名度の高い作品の記事を書いていましたが、

今回からは映像化していないライトノベルのレビューも書いていこうと思います。

映像化していない作品だと無料で見れるアニメを見てから買うか決める!!ということもできませんしね。

 

なぜそう思ったかと言いますと、私は月に10冊前後の本を読んでいるのですが…

(もちろんラノベだけでなく一般文芸も読みますよ!!)

度々思うんです、「クソっ!外れ引いたわー」と、

何が言いたいかというと面白くない本って結構多いんですよね。

 

何が面白くて面白くないかというのは、

読者の趣味嗜好によるものが大きいと思いますが

中にはそれ以前の問題の作品も存在します。

 

私はお金を出して買う以上一定のレベルは超えていて欲しいと考えています。

最低でも読める文章であって欲しいです。

(私も文章を書くのは得意ではないですが、まぁお金をもらっているわけではないのでご愛敬ということで…)

もちろん文章力以外にも物語の構成やキャラクターが生きているか(たまに全てのキャラクターが同一人物みたいに個性が全くない作品があるので)など大切な要素はあります。

上げていけばキリがないです。

 

と、まぁそんな感じの思いがありまして記事を書いていこうと思ったわけです。

もし買うかどうか迷っている方がいれば何かの指標になれば幸いです。

長くなりましたが、ここからが本題です。

 

今回の作品はタイトルにもありますとおり

君が、仲間を殺した数」です。

なかなか、ショッキングなタイトルですよね。

最近は長いタイトルがブームとなっているのか、長すぎて覚えられない問題が多々発生しますがこの作品はその心配がありませんね(笑)

 

この作品はたまたま書店に寄った時に見つけたのですが、

作品タイトルと帯に書いてあった一文に一目惚れして即買いしてしまいました。

ちなみに帯には「もう心など、要らない」と書いてありました。

ダークファンタジーが好きな私としてはもう内容が気になって気になって、

どんなエグい話が読めるのか期待に胸を膨らませて買うに至りました。

 

 

あらすじ

その日、ある少年が死んだ。
 仲間思いで心優しい、少しだけ照れ屋な……そんな彼はいなくなり、瞳に仄暗い光を宿した狂戦士のような男が、ただ一人立っていた。
 少年の名はスカイツ。彼は、幼馴染たちで構成されたパーティである《塔》を攻略するさなかに、魔の祝福を受けてしまう。
「自分が死ぬと、その場に居合わせた仲間の“能力”と――“存在そのもの”を吸収して、時間を戻し復活する」能力。
 親しい友を意図せず自らの力で「喰らい」、失意の彼は次第に心を擦り減らしていく。そして、その身を削る苦しみの果て、彼は【鬼】へとその身を堕とす。
 《塔》に挑む者たちの異常な日々と、彼らの罪と咎を描くダークファンタジー

 

作品について

「君が、仲間を殺した数」は有象利路氏による新作タイトルで、

2020年10月10日に電撃文庫より刊行されました。

現在(2020年11月)は本巻のみ出版されており、続巻も今後刊行予定とのことです。

作品ジャンルとしてはダークファンタジーに分類されます。 

 

※有象利路氏は「僕たちの青春は覇権を取れない」や「賢勇者シコルスキ・ジーライフの大いなる探求」で知られる作家です。

 

 

作品の概要と設定

舞台はもちろん、日本…ではなくお約束の中世ヨーロッパ風になっています。

”塔”と呼ばれるダンジョンが存在する世界でその塔を攻略していくことが物語のメインになります。

 

塔の周辺は、塔の攻略をする”昇降者”や、かれらと取引をする商人などにより人が集まることで街が形成されています。

 

主人公はその街で生まれ育った”スカイツ”という少年。

スカイツは塔を攻略するべく、幼馴染4人と師匠の計6で構成された新米ギルドとして活動しています。

電撃文庫 в Twitter: "孤児院育ちの幼なじみで構成された冒険者の ...

スカイツはある日の探索中の事件をきっかけに、

自らの死をトリガーとして周囲の仲間を喰らい、”技能”を奪い取る力を手に入れます。

この能力は自らの意思に関係なく発動するため作中でスカイツは、

自らが仲間を殺してしまった苦悩や絶望に打ちのめされながらも生き残ったメンバーとともに前に進んでいく様子が描かれています。

 

 

作品の魅力

(※幼馴染との思い出の写真)

 

この主人公が手に入れた力。

「自分の代わりに仲間が死ぬだけ」

…ということであればよかったのですが(よくはない)

主人公の代わりに死んだ人間は存在自体が消えてしまい主人公以外の記憶からは消えてしまいます。

 

この作品の魅力は、自らが大切な仲間を殺してしまった苦悩。

生存している仲間とはかみ合わない、自分だけが覚えている死んだ仲間との記憶。

絶望、疎外感というような苦悩とどのように向き合い成長していくかというところだと思います。

(※死んだ仲間のことを誰も覚えていないことを知ったシーン)

 

このただでさえ重いストーリーを際立たせるのは、

平和な日常のやり取りですね。

主人公の所属する新米ギルドは、殆どが孤児院の幼馴染のため

お互いを思いやるシーンが多く心が温まります。

また、ライトノベル特有の男の子ならニヤッとしてしまうような

サービスシーンもあったりします。

(サービスシーンととらえるかどうかは諸説あります。)

 

実はこの日常シーンただの休憩パートかと思いきや後半の絶望のための最高のスパイスになっています。

読者は、物語前半で感情移入したキャラに死んでほしくない、生きていてほしいと思うことでしょう。その希望はあっけなく打ち砕かれます。

物語後半では、日常パートの平和とかけ離れた悲劇が訪れます。

 

私自身も読んでいてつらかったです。胸が詰まりそうになりました。

前半との落差がひどい。

例えるなら、甘いスイーツを楽しんでいたはずが、

中にデスソースが入っているドッキリを喰らったようです。 

…(´゚д゚`)

 

ネットの意見

肯定派

唯一の希望にすがって戦っていく、その始まり。これは今後が気になる。

最近の流行りに真正面から逆らった一切の容赦がない展開に、有象さんの才能が滲み出る。

 

否定派

えぐさが足りていないのが不満。

・なんとなくタイトル負けしている気がする。

 

まだあまり知られていない作品ということで感想をさがすのも大変でしたが、

正直、面白いという意見が大半でつまらないという意見は見当たりませんでした。

 

否定されている理由も作品が面白くないというよりは、もっと暗い雰囲気にしてほしいという意見があるだけだったので、それだけ作品としての完成度は高いといえると思います。

 

なななの感想

 圧倒的な絶望の中、かすかな希望を追い求めていくような作品が好きな私としては満足できる作品でした。

 

暗い描写ばかりでなくライトノベルらしく明るいパートもありなかなかバランスが取れているのもまた良かったです。

 

いわゆる読者に嫌われがちなご都合主義もなく…いや、主人公を追い詰めるという面ではかなり仕事していましたね。

 

作者の方があとがきで「1巻だけで十分楽しめる内容になっている」と書いているのですが、全く持ってその通りでした。

フラグもほとんど全て本巻だけで回収されていますし、説明不足で疑問が残るということもありませんでした。

 

個人的には久々に熱中して読める作品でした。

ネットの他の意見も悪くはないので駄作ではないことは確かです。

趣味、志向が合う方はぜひ一度読んでみることをお勧めします。

 

 

 

はい。

本編はここまでです。

読んでいただいた方はありがとうございます。